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雑談編
「えーと、それじゃあまずは名前と職業を」
「諜報員をやっているユールガと……おい、雑談をするなら既に知っていることを聞くのは悪手だろう」
「ツッコミが長い。そして堅い。やり直し」
「偉そうに……」
「偉いですよ?」
ユールガは、今まで会った中でも最も調子の狂う相手と会話している。オウヴァの比ではないくらい調子が狂う。相手が純粋に仲良く雑談をしたがっているのが余計にたちが悪い。
そしてその反応を見てアプフェルドルンはかなり楽しくなり、更に仲良く雑談をしたいと思い始める。
ここに、凸凹コンビ的循環が生まれたのである!
「偉いのか? 俺とそんなに歳が変わらなさそうだが……いや、俺も偉いのか?」
「私の方がありえないくらい年上だと思いますけどね。年齢なんて些細なこと。とにかく、私は偉いんです。影のフィクサーです」
「そんな大物ならとっくに俺達に認知されてるだろう」
「ああ、誰も言うこと聞かないから無理ないですね」
「偉くないな! まあお前の言うことなんて確かに誰が聞くのやらと思うがな」
「ひっどーい!」
急に口調まで変えて、一体何なのだ。
ユールガにしては珍しく、早く助けに来てくれ、と本気で友に願い始めた。今まで受けた苦難と比べても、ある意味で比にならないくらいに地獄である。
「あっそうだ、ゲームやります?私とっても上手いですよ。スピードランとかのランキングにけっこう入るんですよ」
「知らん。興味ない。というか俺の意思を尊重しろ。俺は話したくないから話しかけるな」
「そうですか。私はとってもお話したいですよ。何度でもゲームに誘っちゃいます」
その後も数時間経つまで、「無視」という選択肢はユールガには思いつかなかった。
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