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救出編
促されるままに二人が着いた部屋には、ユールガが居た。目が死んでいる。息がある上に外傷がないので命に関わる事態ではないのは分かるが、全く動かない。
「どう、した……の? そんな、なんか凄い顔しちゃって」
「ああ、ハイリンゼル……気をつけろ、ここは地獄だ。本気でお前達に助けを求めてしまったくらい地獄だ。そして来てもらって言うのもあれだが……来るべきじゃなかったぞ、お前達」
明らかに気力が失われた声で、ユールガは語る。それはまるで、死にかけの人間が最期の言葉を伝えるかのよう。
「いやいやいや。話にたくさん付き合ってくれたでしょう? お料理だって美味しいでしょう? 何が地獄ですか」
「あー、確かにお前の料理は美味かったよ、物凄くな! それだけは認める、一瞬こいつらにも紹介したいと血迷うくらいにはな!」
それを聞くなり、ヨダレが出そうになるハイリンゼル。少し気が緩むが警戒し直すオウヴァ。本気で嬉しそうなアプフェルドルン。
そしてその勢いのまま料理を作りに行った。3人は、この隙に話し合う。
「ちょうどいいな。あちらは異様なほど無警戒だ。逃げるぞ」
オウヴァの提案を、ユールガはすぐに否定する。
「いや。奴はとんでもないやり手だ。隙だらけかと思ってもすぐ追いつかれる。戦って勝てる気もしない。見たところあとで逃がす気はあるから、辛抱はする。もう限界が近いが踏ん張る。それに」
「それに?」
「料理は本当に食べておいた方がいい」
そこまでか、と聞くオウヴァに、ユールガは全力で肯定を返す。
本当にこれだけは食べておけ、と。オウヴァは洗脳されていやしないかと不安になった。
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