運命を分けたもの

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俺の仕事は市職員。区役所の市民総合サービス課に勤務している。 近所の小幡さんが大きな荷物を抱え、孫の転出届を提出しに来た。 「木幡さん大丈夫かい?無理しっさんな。荷物持つから」 「あら、ありがとうない」 小幡さんの息子夫婦はふたり揃って中学校の教諭をしている。 「中学校の卒業式晴れて良かったですね。木幡さん……」 木幡さんは曲がった腰を伸ばし、じっと東の空を見上げていた。 その直後。 ゴゴゴゴーー ガガガガーー とてつもない地鳴りとともに下から突き上げるような強い揺れに襲われた。 立っていられないほどの強い揺れに、木幡さんを抱き抱えその場にしゃがみこんだ。 電信柱が大きく左右に揺れ、駐車してある車もひっくり返るんじゃないか、そのくらい大きく揺れていた。 長い長い揺れのあと、あれほど晴れていた空を厚い鈍色の雲が覆い、突然雪が降り始めた。 津波警報が町中に鳴り響き、防災無線で高台に至急避難するように呼び掛けていた。 木幡さんやほかの人たちを安全な場所に避難させ、コウタに電話を掛けたが繋がらなかった。
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