震災前夜

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布団にそっと寝かせると、コウタが服にしがみついてきてなかなか離れようとしなかった。 「俺は抱き枕じゃないぞ」 「今どこにいますか?何度メールしても返信がないんだ。電話も繋がらない。今どこにいますか?ラインも既読がつかないんだ。高将さん、僕はなにもやってない。信じてほしい」 目で必死で訴えるコウタ。嘘をついているとは思えなかった。 「何があった?」 「彼女は元カレにつきまとわれてて困っていた。きっと元カレが彼女を連れ去ったんだ」 「分かった。まずは落ち着け」 コウタの背を撫でて宥めてやった。 「明日仕事が終わったらバイト先に迎えにいく。一緒に警察に行こう」 「本当?嘘じゃない?」 「あぁ、約束する………だって、だろ、俺たち」 コウタに兄と呼ばれたことはまだ一度もない。高将さん、のままでも別に構わない。でも、兄と呼んで欲しかった。
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