運命を分けたもの

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目の前に広がるこの世のものとは思えない地獄絵図のような光景に俺は絶句し、呆然と立ち尽くすしかなかった。 風光明媚な美しい海岸は押し寄せた大津波で跡形もなく破壊され、小高川河口の堰堤は地盤沈下し、大破していた。 コウタは駅前にあるコンビニエンスストアでバイトをしている。自宅も近い。連絡がないのは無事な証拠と安心しきっていたのがそもそもの間違いだった。 夜になっても電話が繋がらなかった。 高さ9メートルを越える津波が沿岸部を襲い、甚大な被害が出ている。相次ぐ余震に情報が錯綜し電話も鳴りっぱなしで区役所はまさに戦場と化した。 避難所が開設され、合間を見てバイト先の関係者に電話を掛けまくった。 コウタ、誰かに電話で呼び出されたみたいで。村上海岸に自転車で向かうって言ってて。やっと繋がった店長の電話に俺は愕然とした。 目の前が真っ暗になった。 嘘だろう……。 村上海岸へはチャリを飛ばせば20分くらいの距離だ。コウタを呼び出したのは少女をストーカーしていた男だろう。 「コウタ!コウタ!」 踏ん張っていないと体が持っていかれるくらい強い風に身を弄ばれながら、荒れ狂う海に向かい声が嗄れるまで俺はコウタの名前を呼び続けた。
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