運命を分けたもの

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津波に襲われた福島第一原子力発電所一号機の原子炉建屋で爆発。白煙が上がったのは、この日の午後3時36分過ぎ。 はじめ半径10キロ圏内に出されていた避難指示は、14日に起きた3号機の水素爆発、15日に起きた4号機の水素爆発で10キロから20キロ圏内に広げられた。自宅のある小高区とコウタが最後に目撃された村上海岸にも立ち入ることが出来なくなってしまった。 「コウタ、ごめんな。探してやることが出来ない。兄さん、なにも出来ない」 何気ない日常がどれだけ幸せだったか。 こんなことになるならもっとコウタと話しをすれば良かった。好きな音楽、趣味、映画。何一つ俺は知ろうともしなかった。もっと大事にすれば良かった。失ってはじめてコウタの存在そのものが俺の心の大部分を占めていることにやっと気付かされた。 立入禁止と書かれたバリケードの前で、自分の無力さに絶望し、泣き崩れた。
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