運命を分けたもの

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震災から11年ーー。 村上海岸は護岸工事が進み、昔の面影はほとんど残っていない。 小高区に出されていた避難命令が解除になった日、俺は市職員を辞め、福島市郊外のどかな田舎町に移住した。 コウタのことを覚えているひとはおそらく誰もいないだろう。 毎年遺族として参列している慰霊祭も今年で最後。もう二度とこの地を踏まないと心に誓った。 震災から2か月後。行方不明者捜索で発見された遺体のDNA鑑定で、2月から行方不明になっていた少女の遺体だと判明した。村上海岸から数メートルのがれきの中で見つかった。 少女をストーカーしていた男性は、同じ月にゴーストタウンと化した小高の町で首をくくり亡くなっているのがパトロールしていた警察によって発見された。少女とコウタを殺害し海岸に遺棄したことをほのめかす遺書が残されてあった。 俺はコウタの死をどうしても受け入れることが出来なかった。 だから、何度も何度も村上海岸に足を伸ばし、コウタをひたすら探し続けた。 「コウタ……すみません。間違えました」 コウタと同じ年齢、背格好の青年と町で擦れ違ったとき思わず声を掛け、変な目で見られたことは数え切れない。
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