序章

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序章

『その昔、天上神ゼロに仕えた碧目(ろくもく)種族は地上界に名を馳せる美貌持ちであったが、種族の女長ヴァンデールが神の子息ラオスと恋に堕ちた事で天上神の逆鱗に触れ、一族はその容姿を奪われた。』 『ヴァンデールとその種族を哀れに思ったラオスは、種族を元の美貌に戻す事を条件に、彼らに新たなる贖罪を与え賜うた。それは代々続く種族にとって大変に重く、惨たるものであった————。』 * 「ちょっと待ってください、そんなお話、聞いてません……!」 その勢いで、丸いスツールがガタンッ! 大理石の床に転がった。 慌てる彼女を横目に、群青色の制服を整然と着こなした担当侍従は涼しい顔をしている。 「『白の侍女』二十名は、宮廷に従事する三百名の侍女の中で最も高い地位を保ち、給金は他の侍女の倍額。よって『白の侍女』の肩書を得ている。不勉強なそなたが悪い」   宮廷で過ごす一年間について説明を受けるなかで、与えられた職務の内容に耳を疑うような文言があったため、セリーナ・ダルキアは思わず腰を上げたのだった。 「も、……もう一度確認させていただきたいのですが!? この『(とぎ)の世話をする』と言うのは、その……」 渡された書類の中にある一文を震える指で指し示す。 「皇太子殿下の宵のお相手をする事以外に、どんな意味があると言うのだ。時間が無いのだ、無意味な質問は控えるように!」 眉をひそめた侍従が声を荒げた。 (こ、皇太子って、冷酷無比で有名な、あの帝国皇太子殿下っ?!)
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