溝口、山田、ときどき俺。

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「なぁ」  隣の山田が言った。俺は、購買でゲットした焼きそばパンを黙って頬張る。 「溝口のこと、どう思う?」 「どうって……」 「お前から見て、溝口ってどんなヤツ?」  珍しい。山田がこんなふうにクラスの女子を話題に出すなんて。いつも、ゲームか地上波ドラマの話しかしないのに。山田もそれなりの思春期男子なのだと改めて思い知った。 「どうも何も……」  俺は溝口を思い浮かべた。クラスの中ではあまり目立たないほうだ。だけど、俺としては存在感が強いキラキラ女子よりもよほど好感が持てる。ちゃんと友達もいて、確か、まあまあ頭もよかった、はず。 「まぁ、いいんじゃない?」 「いいんじゃないって、どういうことだよ」 「ふつうに、いい子だと思うけど」  感想を述べる。いい子そうに見えるが、本当にいい子なのかどうか、俺は知らない。女子というのは、恐ろしい生き物なのだと、二歳上の姉の日々の人間関係にまつわる愚痴を聞いていると、思ってしまうが。 「ふうん。そっか」  なぜか分からないが、山田はどことなく満足げだった。親友の好きな女子についての感想が「いい子」というのは、当たり障りもなく、かつ、その女子を持ち上げるという意味を担っているという点では、かなり適した回答だったのかもしれない。にしても、溝口と山田か。案外、悪くない組み合わせではあるが。  ――いったい何がきっかけで好きになったのだろうか。  それを聞こうとしたとき、昼休み終了のチャイムが鳴った。残念。タイムアップ。俺は焼きそばパンをくるんでいたラップのゴミをくしゃっとまとめて、ゴミ箱に捨てた。
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