溝口、山田、ときどき俺。

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***  ――結局俺は、溝口と付き合うことにした。何しろ、女子からの告白自体、人生初めてのことだった。はっきり言えば、とても嬉しかったし、めちゃくちゃテンションが上がった。山田のこともあるけれど、溝口と付き合いたい、という気持ちのほうが勝ってしまった。クラスでの過ごし方を見ていると、やっぱり、彼女はいい子なんじゃないかと思うから。  それを山田に報告すると、山田はなぜかその場でおいおいと号泣しはじめた。 「え、なんで泣くん?」  彼はよほど、溝口のことが好きだったのだろうか。 「い、いやだってさぁ……なんか俺、すげー嬉しくて」 「へ?」 「み、溝口がさぁ……お前のこと好きだっていうから、俺もさ、アイツにはすげぇ幸せになってほしくて」  ――聞けば、溝口と山田は、家が隣同士の幼馴染みだそうだ。学校ではあまり喋らないふたりだが、高校生の今でもお互いの家を行き来したり、兄妹のようになんでも話す、気兼ねない関係らしい。 「なんで学校では溝口と喋んないんだ?」 「あぁ、それは――」  中学のとき、山田と仲良くしていた溝口が、クラスの強気な女子に目をつけられてしまったらしい。どうやらその女子は、山田のことが好きだったらしく、嫉妬によるいやがらせやいじめがあったそうだ。とんだとばっちりだ。やはり女子という生き物は怖い。 「俺はてっきり、山田があんな質問するからさ、お前が溝口のこと好きなのかもって思って」 「いやぁ、確かにあれは勘違いさせちまうよな、ごめん。でもマジでよかったぁ」  山田は心底安堵した表情を浮かべている。溝口に対する優しい思い入れが感じられた。彼女がどんな子なのかは、まだはっきりとは分からないが、こんないいヤツに想われる彼女は、やっぱりそこまで悪い子じゃないのかな、と俺は思った。
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