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第1番 可愛い子犬
『愛音先輩、一緒に行ーきましょー?』
1つ下の後輩君。
華奢な体つきで目鼻立ちも綺麗な可愛い系男子に分類されるであろう彼は、今日も無邪気な笑顔で私の前に立っている。
―――どういうわけか私(一ノ瀬愛音)は、彼(神木夏弦)に懐かれてしまっているらしい。
「神木君。今日も元気そうだね」
『はい、愛音先輩に会えると思ったら嬉しくってー』
「あのね、毎日言ってることなんだけど、どうせ部活で会うんだし、わざわざ2年の教室まで来なくても…」
『だって、先輩来るの待ってられなくて♡』
「待つ必要は全くないんだけど?」
『そんなこと言わないで下さいよー』
にこにこと笑って小首を傾げる。
懐いて尻尾を振る子犬さながらに、甘えるようにじゃれついてくる神木君。
うん、どう見ても子犬だ、子犬。
ただ…、ココ。2年の教室前の廊下なんですけど?
人目を憚らない彼に曖昧な笑顔を返していると、同じ教室から和音が出てきた。
『振られたならさっさと退きなさいよ、神木君』
『……いたんですか、中川先輩』
『そっちこそ何でいるの?音楽室までの道、忘れた?』
『迷子になった、って言ったら、愛音先輩、一緒に行ってくれますー?』
「えーっと、ね…」
『毎日めげないよね、コイツ…』
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