第1番 可愛い子犬

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八尾君に連れて行かれた神木君は、当然ながら先に音楽室に着いていたみたい。 階段を上りきった音楽室前の靴箱にもたれるように立っているその表情は不機嫌そのもの。 階段途中の私達をムッとした表情で見ていて、 「あのね、別に音痴だとは言ってない…」 『いいですよ。音痴なのもセンスがないのも本当のことなんで』 『あら嫌だ。盗み聞きなんて趣味悪いんじゃない?』 『嫌でも聞こえますよ。中川先輩の声はでかすぎるんで。女性しては』 『あーあー、発声もロクにできない奴がよく言うわ』 『お言葉ですが、発声はできてます』 『そう?外してるのは音だけだった?ここまで下手だと誰のために入ったか一目瞭然ねー』 『入部の動機なんて何だっていいじゃないですか!!』 ついには声を荒らげた神木君に、和音はしたり顔でにやりと笑う。 あーあ、神木君の悔しそうな顔ったら…。 ここで、追い討ちをかけるように八尾君が窓から顔を覗かせて、 『おい神木、なに遊んでんだよ』 『あぁっ、スミマセン!!すぐ行きます!!』 弾かれた様に振り返った神木君は、一目散に音楽室へと駆けていった。 さすが元テニス部。速…。
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