さいごの幸せ

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そこで先生から告げられたのは、衝撃の一言だった。 癌だと。 末期癌だと、もう手の施し様がなく、痛みを取ることしかできないと告げられた。 俺は絶望した。 せっかく手に入れた幸せを失う事になるなんて。 お母さんは静かに俺を抱きしめて泣いていた。 俺は悲しさもあったが、お母さんへの感謝が胸の中いっぱいに広がった。 ここまで育ててくれてありがとう。 いっぱい愛情をくれてありがとう。 俺はお母さんが大好きだ。 1カ月後… 俺は寝たきりの生活を強いられる事になった。 お母さんは毎日、楽しかった日々のことを話してくれる。 俺は、お母さんに聞いた楽しかった日々を思い出す度、穏やかな気持ちになった。 最後のその時までお母さんの側にいたい。 様々な想いが俺の中を巡った。 そして、遂に最期の時がやってこようとしていた。 この頃になると俺は衰弱し、お母さんの姿を目で追うのも難しくなっていた。 「タロウ、私を置いて逝かないでおくれ 私を1人にしないでおくれ。」 お母さんは俺を静かに抱きしめ呟いた。 眠たくなってきた。 とても幸せな気分だ。 最期まで大好きなお母さんの側にいられて、 お母さんは今も俺を抱きしめてくれている。 幸せだった。 施設から引き取ってくれてありがとう。 幸せな日々をありがとう。 そして、 お母さんになってくれてありがとう。 俺は叫ぶ! 「ワォォーン‼︎!」 俺は最後の力を振り絞り、お母さんに最後の感謝を伝えた。 こうして俺は眠りについた。 俺の一生はここで終わった。 ただ一つ願いが叶うならば… 叶えて欲しいことが、一つある。 もしも生まれ変わりがあるのなら、 次は、   お母さんの本当の子供として生まれたい。
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