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田舎の祖父母の家には、カミサマ専用の出入口がある。
お勝手口はお手伝いさんと業者さん。
南向きの玄関は家族やお客さん。
そして、北側の長い長い木の廊下の先にある、大きな古い錠前のついた黒い扉はカミサマのためのドアだ。
さすが山奥の村には不思議な風習があるねなんて学校の友達は笑うけど。
家族は誰も笑わない。
一番偉いおじいちゃんだって、あの扉は使わない。
だって。
あのドアを開けた人間は酷い目にあうから。
――――ギシッ、ズズ……ズズズ……
あぁ、今夜もあの音が聞こえる。
祖父母宅に泊まりに来るといつもこうだ。
あと一週間、毎晩この音を聞かなきゃいけないなんて。
あたしは真っ暗な部屋の中、頭から布団を被って息を殺す。
早く、早く通りすぎて。
早く、早く朝がきて明るくなって。
――――ギシッ、ズズ……ズズズ……
襖だけを隔てた長い長い木の廊下。
カミサマの扉に向かって音が移動していく。
――――ギシッ、ズズ……ズズズ……
あぁ、どうか早く朝になりますように。
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