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一章 「無人の横浜駅」
高1の鈴木美歌は電車を乗り換えるため、横浜駅の階段を下りていた。改札口を抜けた時、耳が変になりそうなほど大きな羽音を立てているオオスズメバチの群れが見えた。虫の苦手な彼女は真っ青な顔でその場に座り込んでしまう。
その中の一匹に刺されそうになったが、息絶えてぽとっと床に落ちた。消えかけの火がついた新聞紙がホームに落ちている。
「ミィ!こっちだ!」と呼ばれて顔を上げると、グリーンのフリースに黒い冬用ジーンズ姿の少年が彼女に向かって手を振っていた。幼なじみの宮木優だ。
「優ちゃん!どうやってハチたちを焼いたの?」「これだよ」と答え、彼は
新聞とマッチをリュックサックから出し、ペットボトルの水を火にかけて消すと「そごうに入ろう」と言って歩き出す。
食品フロアや本屋も人がいない。洋書の上にオレンジ色や黄色の小さな鳥が止まって子育てをしている。
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