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優は「さっき話してた男は東京のすし店で働くイギリス人だ。22歳の時に
来日してから10年、マグロやサーモンを握ってたらしい。
でも解雇されて、人間不信になってしまった。毒バチを卵から育て、いじめをする子どもや大人をビルの中に閉じ込めて攻撃している。俺の妹と父親も、
そこにいるんだ」と言って地図を見始める。
「109ワールドポーターズの1階だ」電車のドアが開き、二人は階段を下りて外に出た。
ビルの中に入ると、小中高生や大人たちの前に、片眼鏡をつけた男性が
立っているのが見えた。そのそばではハチたちが羽音を立てている。
優と同じ切れ長の目を持つ少女が、エスカレーターのそばに座ってせき込んでいた。彼の14歳の妹、彩葉である。
「彩葉!」駆け寄った優が背中をさすると、「兄さん。美歌さん、久しぶりですね」と笑みを見せる。
「薬はもらえたか?」「ううん。まだ病院に行けてなかったから」優はリュックサックからビニール袋を出し、緑色の錠剤を妹に渡した。
「飲んでおいたほうがいい。いつまた出るかわからないから」彩葉はうなずいて錠剤を水と一緒に飲み、「ありがとう」と兄に言った。
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