みなとみらいサバイバル

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 「僕、から揚げって自分で作ったことなかったんです。美味しいですね」博人がそう言うと、「お腹壊さないように、これから獲るものは火を入れるようにしようぜ」と優が答えた。彼のフリースはメンフクロウの落とす羽があちこちについている。  「俺にばっかり羽つけるなよ」メンフクロウは首を回しながら、彼をじっと 見つめている。  彼らの近くでハチの羽音が聞こえ、そちらを見ると優と彩葉の父まさよしが 刺されて失神していた。一緒にいるのはスマホがなければ落ち着かない男子高校生大貴(だいき)と茶髪の女子中学生秋花(あきか)だ。  二人は自分たちの獲った鳥を隠れて食べていたまさよしの背中と頭を蹴ると、カップラーメンミュージアムへと向かった。  「バカおやじ!何してんだよ」優は父親に怒鳴って立ち上がらせる。「優。 彩葉もどうしてここに?」と小さな声で聞く。顔が紫色になっていた。  「ルークに連れてこられた。あんたに言いたいことがある。彩葉の通院や 薬を買うための40万円で、女性雑誌を自分の部屋がいっぱいになるほど買ってただろ!  俺がトイレ清掃とCDショップのアルバイトでもらった金で薬を毎月買わないと、彼女は生活ができないんだぞ!あんたは自分のことしか考えてない、最悪な男だ!」優はそう叫んで父親の背中を殴ると、地面に座り込んだ。
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