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「どうしたの? 溜息をつくと幸せが逃げていくって私のお母さんが言ってたよ」
中澤君がゆっくりと私を見ました。
私に話し掛けられるなんて中澤君は予想もしていなかったはずです。
「え?」
中澤君が口を動かしたのですが、全然聞こえなかったので聞き返します。
「いいんだよ。逃げていく幸せがないから……」
逃げていく幸せがないなんて中澤君はおかしなことを言っています。
私は、今この瞬間が幸せです。生きているだけで幸せです。
みんなと歌を歌えるし、休み時間に友達とお話もできます。家に帰ればお母さんの美味しい料理だって食べられます。
どれも私が幸せと感じることです。
中澤君には私以上に友達が大勢いるし、運動神経もいいから休み時間のドッジボールでは大活躍です。
絶対に幸せなはずです。それなのに幸せじゃないなんて……。
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