忘れられない発表会

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忘れられない発表会

 私、高木彩(たかぎあや)には困っていることがあります。  葉っぱの色が黄色や赤色に変わってきた11月。  小学校に入って初めての発表会が近づき、毎日の練習にも力が入ります。  私達は歌に合わせてその場で軽く踊ります。今日も体育館に集まって歌を歌います。みんなの歌声が重なり体育館に響きます。  私は体育館に響くこの音を聞くのが大好きです。   それから踊るのも大好きです。  間奏で2回手をぱんっぱんっと叩いたり、腕を元気よく前後に振ります。  でも、放課後に1人で練習した時は全然響きませんでした。  思いっきり手が赤くなるくらい叩いてみてもやっぱり大きい音は出ませんでした。不思議です。  1人だと絶対に出すことができない歌声や音を発表会の練習中は思う存分聞くことができます。  それなのに、私の隣に立っている中澤(なかざわ)君は全然手を叩きません。  歌も聞こえるか聞こえないかぐらいのボリュームです。  普段は先生に注意されるくらいうるさいのに、発表会の練習が始まってから急に静かになりました。  練習が始まった頃は、どこか調子でも悪いのかなと思いましたが、もう2週間以上もこの調子です。困りました。  教室で国語の授業を受けている時も、算数の授業を受けている時も、なんだか元気がなさそうでした。  私は、中澤君と話したことがあまりないので、自分から話し掛けることができませんでした。  だけど、今日の中澤君はいつもの中澤君とは少し違いました。歌の途中に溜息をついたのです。  あまりにもその溜息が大きかったので、私は思わず中澤君に声を掛けてしまいました。
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