ダルジュロスの王子とアンダルシアの少女2

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 「父さんもいろいろな花で石けんや(しおり)を作って売ってた。弟のアンドリューおじさんもたまに来てくれて、一緒に服を買ってくれた」涙が出てきて、アリスはお湯で目元を洗う。  シャーリーが「あなたの髪、結んでいい?」と聞いてきた。「うん」と答え、深呼吸をして鏡を見つめる。フォイアーが見たら何と言うだろうと考え、思わず顔が赤くなった。  頭の上で丸い形になった茶色い髪から、ハチミツの石けんの香りが湯気と 一緒に流れている。花の茎から作られた緑色のヘアゴムには、塔の外でも増え続けているキンモクセイの花びらがついていた。「ありがとう」と言うと、 「素敵だよ」と笑みを返された。  「アリス、起きてるか?」と言ってフォイアーが彼女の部屋に入って来た。 彼は「髪、結んだんだな」とつぶやきながら隣のベッドに入り、彼女を抱きしめる。  心拍数が上がるのを感じながら「シャーリーがやってくれたの」と答えると、彼はにっこりと笑って「いい友達だな」とつぶやいた。
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