第八話 スウィートバイオレンス

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「お前らの銃、けっこう良いやつだな」 「あ? ああこれか、前の仕事でぶっ殺した奴が武器の売買をやっててよ、そいつが扱ってたのを頂いたってわけだ」  ローグの引き連れている暴力しか取り柄の無いような男たち、彼らは自らの力を誇示するかのように堂々と武器を背負っている。   「まあお前らは精々仲良くやってろ、俺たちはこの仕事を成功させてもっとのし上がってやる」  オルロはその言葉に何も返さない、何か言いたげな部下に気付きながらもローグの言葉をただ黙って聞いていた。   「……腰抜けが」  吐き捨てるように呟き、ローグたちは去って行った。彼は自身の言葉に何一つ言い返さないオルロを臆病者と断じ、所詮は五十人程度の組織の長かと馬鹿にしていた。彼らが去った後、部下たちは不満げな様子を隠せなかった。  もちろん自分たちのボスが馬鹿にされた事に対する憤りはある、だがそれと同じくらいオルロに対する不満もあった。仲良しごっこと言われ、挙句に腰抜けとまで馬鹿にされたのに言い返すでもなく、先ほどまでの飄々とした態度を崩さないオルロの考えが全く理解できなかったのだ。 「とんだ邪魔が入ったな、気を取り直して行くとするか」 「……どうして何も言い返さなかったんですか?」  部下の一人が悔しさを滲ませる、自分が憧れた人を馬鹿にされて彼は悔しくてたまらなかった。若さゆえの素直で実直な怒りを含んだ悔しさは、オルロにも痛く伝わる。 「すまないメルム、悔しい思いをさせたな」  名前を呼ばれた彼は驚いた、ここにいる五人は全員が若手でしかもまともに話すのも今日が初めてだと言うのに自分の名前をオルロが知っていたからだ。  五十人程度の組織、部下の名前など把握しているだろうと思うかもしれないがここでは違う、今朝会った人間が夕方にはわずかな肉片を残しこの世を去る事も少なくない。  入れ替わりの激しい部下たちの名前を、幹部級ならともかく末端の構成員のものまで把握しているとは思っていなかったからだ。 「だが良い機会だ教えとくぞ、ああいう奴らは相手にしないのが一番なんだ」  ローグファミリーはフリッシュ・トラベルタでは比較的新しめの組織で、ローグは元々別の都市にいたが更なる利益と勢力拡大のため半年ほど前に部下を引き連れこの街にやってきた。  彼らの評判は悪く、想定以上の破壊やターゲット以外への暴行などとにかく荒っぽさが目立つ、そのため依頼を出す者たちの間では評判が悪くあまり使われない。だが依頼金が安く済むという点だけは他よりも優れており、一定数の顧客の獲得には成功していた。
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