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かん、かん、かん、と足音を立てて階段を上っていく。
足元から激しい罵声が聞こえてくるが、言葉を聞き取ることはできない。こちらのデータベースにもない不可思議な言語。ただ、それが「罵声」であることはわかるし、きっと階段を上っているXも理解しているはずだ。
Xはひたすらに目の前にある階段を上る。息が切れてきているのがスピーカー越しに聞こえる息遣いでわかるが、速度を落とすことはない。速度を落とせば、追いつかれることがわかっているからだろう。きっと重くなりつつあるだろう足を、次の段へと持ち上げて、前へ。ただ、前へ。
階段は螺旋状になっていて、ぐるぐると同じ場所を回り続けているような錯覚に囚われる。それでいて、上へ上へと追いつめられているのがわかるだけに、見ているだけしかできない私も手に汗を握ってしまう。
そう、明らかにXは追い詰められているのだ。自分がどこに向かおうとしているのかもはっきりとはわからないまま、追われるままに走り続けている以上、最後には追いつめられるに決まっているのだ。
どのくらい、そうしていただろう。
スピーカー越しの息遣いが更に激しくなってきたところで、目の前に金属製の扉が現れた。鍵はかかっていなかったようで、Xはその扉を勢いよく開く。
すると、ごう、という風の音と共に視界が開けた。
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