林君のロボットは開発中

1/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「母さん手伝いロボット、かぁ~」 中学校からの帰り道、僕の隣を歩いている林君がため息を吐く。 妙に落ち込んでいる林君に、僕はぶっきらぼうに言う。 「手伝いロボットって、誰かの役に立てばいいだけだろう。だいたい、なんでこんな課題を出すんだ。難しすぎて、夏休み全部潰れてしまいそうだよ」 林君は何も言わずに、ずっと地面ばかりを見ている。 アイデアが浮かばないのだろうか? 僕だったら、適当に作って、ロボットのことより夏休みのことを優先するな。 気が付くと、林君は今日配られた課題一覧表を見ていた。 課題一覧表の一番下に、ぶっといゴシック体で、こう書かれている。 ___________________________________ 【夏休み特別課題!!】  普段、お世話になっているお母さんに感謝を込め、手伝いロボットを  作ろう!!       期日:8月1日、夏休み明け初日  ※夏休み明け最初の授業参観日で、自分の作ったロボットを紹介して  もらいます!! ___________________________________ !マークが異常についていてイラっとくる。 相変わらず、林君はうかない顔をして、課題一覧表をじっと見つめている。 林君はこの課題が嫌なのだろう。 こんなの誰もが嫌だけど、林君は何か嫌な理由があるのだろうと思った。 面倒くさいとか、難しそうだから嫌だ、とかじゃなくてもっと別の理由が。 滅多に質問しない林君は、今日は珍しく先生に質問していた。 「ロボットって、必ず作らないと、だめですか?」 「はぁ?!作らないとだめに決まってるじゃないか!!お前が今こうして生きていられるのも、お前の母さんや父さんのおかげなんだぞ!親に感謝の意を示さないでどうする!!」 滅多に怒らない先生も、今日は珍しく鬼のように怒った。 もしかしたら、林君は今日のことを引きずっているのかもしれない。 先生を怒らせてしまったのだから、先生が求めている以上のロボットを作らなくては、と思っているのかもしれない。 林君は真面目で、僕とは考え方が違う。 僕は、林君が期限までにロボットを作ってこられるか、心配した。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!