ぐるり、転

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棚に並んだ雑誌の表紙で、こちらを見据えている俺の写真に監視されているような気分にはなったけど。軽いストーカーだけど、でも、実害は与えてない。買い物するから、お店にも貢献してるし。 サンドイッチを選ぶふりしながら少し離れたところで気怠げにジュースを並べている美人を眺めていると、「すみません」と声をかけられた。 「うちのスタッフのことを、危ない目で見るのはやめてください」 話しかけてきたのは、彼女と親しげによく会話している男の店員だった。胸元には、小さく〝店長〟の札がつけられている。ふうん。 ていうか、視線でバレていたらしい。色付きの眼鏡も役に立たない。 逆に、ストーカー被害者の本人はどうして気付かないわけ?気付けよ。はやく気付いて、悪態でもいいから話しかけてよ。 なんて、饒舌な心の内を飲み込んで、困ったように笑って見せた。 「あー、ばれてましたか」 「一度や二度ではないですからね、それにお客さん目立ちますし」 ごもっともな指摘を受けて、はははと愛想笑いを返す。この店長の口ぶりだと、俺の職業まで見抜かれている可能性もある。 「気色悪い真似して、すみませんでした」
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