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「いえ、まだお客さんは何も実害を加えてきていないですから。たまに、いるんです。うちのスタッフに会うためだけに来店する方も」
それを聞いてなんだかストーカーが過激化した自分の将来が見えた気がした。
怖くなった俺は、謝罪を込めてまあまあの金額分の買い物をしてコンビニを出た。
無表情でレジを打つおねーさんは、今日も美人でかわいかった。
ここで終われば、俺のストーキング黒歴史として幕は下ろされたはずだ。
もちろん、俺だってそのつもりだった。
気になる異性に話しかけることもできず、ちらちらと盗み見て満足する生活は、ゲイノウジンとして騒がれる生活とは対極にあるけれど、それもそれでなかなか楽しかった。
だからこのまま、終わればよかったんだ。
終われなかったのは、俺の未練と執着心と、悪い嫉妬と好奇心によるものだった。
買い物をしてコンビニを出て、車に乗り込む。
すると、お店の裏口の方へと歩いていく若い男が目に入ってきた。
猫背気味の、気の弱そうだけど優しそうな男。
べつに特筆すべきこともない容姿は可もなく不可もなく、あえて言うならスーツ姿なのでサラリーマンだろうか。
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