とろり、罠

ぐるり、転

そんな、１０人並みの男だけど、なぜだか妙に気になってしまい、車をお店の裏のほうに回してしまった。

俺が、完全なるストーカー気質なのは否めない。

〝黒木虎壱、実は陰湿なストーキング癖あり！〟などと週刊誌の記事にされても俺は怒らない。むしろ「よく知ってるじゃん」と賞賛する。

それから俺は、勘が鋭い。
１０人並みのその男は、やっぱり、とくべつだった。

少し離れた位置に停めた車内から、スマホを触りながら突っ立っているその男をターゲットにする。

黒木虎壱のスキャンダルがどうこうの前に、俺のほうが低俗な記者みたいなまねをしている。

だけど、好奇心には勝てなかった。誰かを待っているその男の様子から、どうにも悪い予感がする。

その後すぐ、予想通り。コンビニの裏口、安っぽい銀色のドアが開いて、ひとりの女性が現れた。

シフト上がりらしい女性は、コンビニの制服を着ておらず、桜色のパーカーにジーンズ姿だ。

そして、男の待ち人である彼女こそ俺が焦がれてやまない店員のおねーさん、そのひとだった。

彼女は、男のもとに駆け寄って何か話しかけている。

容姿や勤務態度からは、クールで落ち着いた印象を与えていたけど、親しい人の前ではわりとよく喋るらしい。