恋の亡骸

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君の事が忘れられない。 僕は君と云う牢獄に囚われてしまった。 僕は云った。 「お互いに忘れよう」 無理だった。 君は今頃、他の誰かに心を癒され新しい恋に目覚めているかもしれない。 僕はそのことが許せない。矛盾しているね。君に幸せになって欲しいのに、醜い嫉妬をしてしまう僕。 胸が潰れる。涙腺が崩壊する。心が粉々に砕けてゆく。 自業自得の僕。 何もかも遅かった。手遅れだった。 君を束縛し、依存し、嫉妬し、間違った愛し方をした。 君に「ごめん」と云っても届かない。届かない。 僕は手を伸ばす。何も掴むことが出来ない。両手は空に溶けて行った。 その指先から、透明になって僕は崩壊する。 君に赦してくれなんて、もう云えない。そんな事を云える身分ではない。 分かっているさ。僕は最低のクズ野郎で、僕は僕が一番嫌いだ。 それでも、君と愛し合った日々が愛おしくて、懐かしくて、切なくて、甘くて苦しい。 もう、僕の初恋は死んでしまった。君は光の中に消えていったよ。 それで良いんだよね?僕はもう、君を想う資格も無い。無価値の少年。 何故、想いは消えてくれないの? 何故、こんなにも哀しいの? 君は今頃、美しい少女に包まれて、抱擁されて、癒されているのかな? 僕の事、忘れてなんて、嘘だよ。 本当は永遠に、憎しみでもいいから、僕の存在をその傷口に埋め込んで、僕の事をずっと思っていてほしいんだ。 それが叶わないなんて、僕はどうしたらいいの? 激しい感情が、身体を貫いて行く。 愛が狂気の憎しみに変わり果てて、僕はその少女ごと君をこの手で殺めたい。 誰か、僕を止めて!暴走する前に誰か、僕を止めて! 今夜も君の頸を締め上げて、君を殺める夢を視る。 嘘。嘘。この手は淋しいだけ。僕の心は淋しいだけ。君に抱き締めてほしかっただけ。 僕はもう、誰とも恋愛はしないし、誰も愛さない。僕の恋は14歳で死んでしまった。制服の詰襟が喉元を締め付けて苦しいね。詰襟学生服、何だか真っ黒で喪服みたいだね。 僕は白い鉄砲百合を抱いて、湖の中に沈んでしまいたい。
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