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 火照る体にぼうっとした思考のまま、大好きなお兄ちゃんの腕枕に幸せを感じていた。 「ねえ、お兄ちゃん?」 「何?」 「クローゼットの中に、古い缶があったんだけど……」 「お前、まさか中見たのか!?」  急に声が上ずったお兄ちゃんに、私はクスクス笑った。 「見た」  お兄ちゃんは耳を真っ赤にして、反対の手で顔を覆った。 「ああー、俺超絶変態ロリコンじゃん……」 「何であんな写真持ってたの?」 「母さんだよ、自分には息子しかいなかったから、娘ができたの嬉しかったんだろ。小さいころから、エリの写真ばっか撮ってた。本当の息子の俺、そっちのけで」  言われてみれば、お母さんはよく私にカメラを向けていた気がする。でもそれが、だんだん嫌になってきて、高校に上がるころにはウザがっていたような…… 「『エリちゃんがカメラ向けても笑ってくれないから』って、エリが高校になったくらいからエリの盗撮まがいのこと初めて、『エリちゃん大きくなったでしょ? 可愛いでしょ?』ってメールで送りつけてくんの」 「それを、印刷してあの中に大事にしまってたの?」 「……ああ、そうだよ!」  投げやりな物言いの中に、愛しさが募る。離れていても、お兄ちゃんは私のことが好きだったんだ。 「……俺の事、嫌いになった?」  顔を覆った指の隙間から、こちらを覗くお兄ちゃん。なんだか可愛い。 「……ううん、大好き」  私はお兄ちゃんに抱きついた。 「私だって、お兄ちゃんの写真があったら、多分集めちゃうもん」 「あーもう、そういうこと言う!」  お兄ちゃんは私の後頭部を掴んで、自分の胸に押し付けた。お兄ちゃんの心臓のドクドク言う音が聞こえて、私はクスッと笑った。  私だって、ずっとずっと前から、お兄ちゃんが、大好きだったんだもん。  そんな気持ちをこめて、大好きな彼の背中を強く強く握り返した。 〈完〉
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