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街を散策し、ウインドウショッピングをしたりカフェでランチをしたり。“普通の恋人らしいこと”をするけれど、ヒカルさんは宣言通り私には触れなかった。
ヒカルさんはやっぱり優しい。だけど、彼は嘘をついているのかもしれない。昨日の疑惑が頭をよぎる。
「どうした? 怖い顔してる」
「いえ、別に何でもないです……」
こんなに優しいんだから。それに、今日だって楽しかったじゃないか。自分に言い聞かせる。
「あの、さ……」
ヒカルさんは急に立ち止まり、頬を染めて頭を掻いた。
「やっぱり、手繋いでもいい?」
周りを見れば、日の沈んだ街で道行くカップルは皆、手を繋いだり腕を組んだりしている。
「ごめん、やっぱりいいや、そろそろ帰ろう」
戸惑う私を見て、ヒカリさんは私に背を向け先を歩き出す。
「待ってください!」
私は先を行くヒカルさんの手をとった。なぜだか分からないけれど、そうしたかった。
彼の大きな手の平は、なんとなく懐かしい感じがした。
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