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「待って! 待ってよ、お兄ちゃん!」
私はベッドから離れていこうとするお兄ちゃんの腕を掴んだ。
「やめろよ、こんな兄貴嫌だろ? キモいだろ? 軽蔑するだろ?」
「本当に悪ふざけだったの?」
「そんなのどっちでもいいだろ! 俺とお前は兄妹なんだぞ!」
どっちでも、良くない。だって、私は、お兄ちゃんのことが──
「お兄ちゃんが、ずっと好きだった! 私を助けてくれた時から、お兄ちゃんは憧れだった! かっこよくて、いつでも守ってくれる、私だけの王子様だった! それに、今だって……」
目頭がじわんと熱を持つ。そして雫が一筋、頬を伝って落ちていった。
一度流れ出したそれは、止まることを知らない。だけど、そのくらい、ずっと前から、私はお兄ちゃんが好きだった。
「お兄ちゃんだって、私のこと──」
「言うな」
お兄ちゃんは私の頬を手の平で拭って、優しい声色でそう言う。
「俺たちは、兄妹なんだ」
そんなこと言われたって、大好きなお兄ちゃんに触れられている頬は、信じられないくらい、熱くて、ジンジンして、その温もりが、私の胸を甘くドキドキさせる。
「でも、血は繋がってないじゃん……」
タブーかもしれない。でも、それでもいい。私は、お兄ちゃんが好き。お兄ちゃんも、私が好きだった。
「エリ……」
大好きなお兄ちゃんに呼ばれた私の名前は、なんて甘く響くんだろう。
「好き……」
好き。大好き。あの時から、ずっと大好き。
「……ん」
そっと近づいてきたお兄ちゃんの唇が、私のそれに重なる。
「俺も、エリが好きだ」
お兄ちゃんは、私の涙を拭うように、いくつものキスを私に落とす。私は大好きなお兄ちゃんの背中に手を回した。初めて触れた温もりに、胸が大きく鼓動を打つ。
いつの間にか反転した視界には、天井の前に大好きなお兄ちゃんが見える。
「もう、投げとばしたりしないよ?」
おどけてそう言うと、お兄ちゃんは眉をハの字に曲げながら微笑む。
「本当に、いいんだな?」
止めるのを忘れたボタンの隙間から見える愛しい人のその素肌に、急に恥ずかしくなって、私はコクンと頷くのが精いっぱいだった。
お兄ちゃんはまるで壊れ物を扱うように、とても大切に私の熱を溶かしてくれた。
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