212人が本棚に入れています
本棚に追加
どうやら私は交通事故に遭い、3日間眠り続けていたらしい。記憶以外に異常はないということで、次の日退院になった。
「前の生活を続けていれば早くに思い出すかもしれないですね」
お医者さんのその一言で、私は“ヒカル”と名乗った彼の部屋に“帰って”くることになった。
「私、ここに住んでいたんですか?」
彼の部屋はとあるマンションの3階の1LDK。
「ああ。3日前はもっと綺麗だったんだけど」
ヒカルさんは、私に気遣って先に部屋に上がった。玄関先で靴を脱ぎ、きっちりそろえた私を見て、ヒカルさんは苦笑した。
「エリは、本当に何も覚えていないんだな」
「ごめんなさい……」
「いや、エリを責めるつもりで言ったんじゃないんだ!」
あたふたとするヒカルさんに、私は思わずクスっと笑った。
「……可愛い」
「へ?」
「あー。いや、見ず知らずのよく分からない男に『可愛い』とか言われても、気持ち悪いよな、ごめん……」
ヒカルさんはおろおろとして、とりあえず中へどうぞと私をリビングに促した。
最初のコメントを投稿しよう!