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「私とヒカルさんって……」
ヒカルさんはキッチンで紅茶を淹れている。私はリビングのソファに腰掛け、自分も住んでいたという見ず知らずの空間に落ち着かないでいた。
「関係性だよな、聞かれるまで黙っていようと思ってたんだ」
ヒカルさんはそのままピンクのドット柄のマグカップを私の前に置く。そして、私の隣に座ると自分の前には緑色のドット柄のマグカップを置いた。
「エリと僕は婚約していたんだ」
ヒカルさんは自身のマグカップを持ち上げて、それを愛おしそうに目を細めて眺めた。
「一緒に買いに行ったんですね」
「え?」
「おそろいのカップだから……そうかな、って」
「なんだ、思い出したのかと思った……」
ヒカルさんはほう、と息をついた。
「ごめんなさい」
「別に、エリが謝ることじゃない」
ヒカルさんはそう言ったけれど、やっぱり少し寂しそうに瞳を揺らす。
「あの──」
「何?」
「もっと、教えてもらってもいいですか? ヒカルさんと、私のこと」
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