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連れて行かれるままに細い裏道を辿っていく。気が付けば、昨日化者と斬り合った神社の前に居た。
小さな社は神社と言うよりは祠と言った感じの風情で、そこに参拝する者はそうは居ないだろう。そのすぐ近くに、蹲っている小さな女の子を見つける。
白一色の薄い服を着ているが、それは少し汚れているようだ。
周囲には孤児院の子供たちが集まって話しかけていた。
「無事か?」
その声に子供たちがそれぞれに肯定した。
圭は少女の前にしゃがんで、状態を確かめる。
触れると、ぴり、と静電気に似た感覚があった。冬でもないのにどうしてだろうと考えるより前に、彼女が顔を上げていた。
涙に濡れる顔には、僅かに血痕が残っている。
何かあったのかと問うても、首を振って話そうとしない。黒い髪を振りながら、しかしその場から動かない少女を、圭は迷うことなく抱え上げる。
驚いた少女が拒絶するように暴れるのを冷静に抑え込みながら、皆と帰っていく。
戻ってきたとき、新奈は空羽を研磨している最中だったので、夕食の準備をしなければならなかったのだが。
「逃げ出されても厄介だな……」
「ぼくが見てるよ。圭兄は安心していいよ」
「そうか、頼んだ」
心配というか不安が拭えたわけではないけれど、信頼していないわけでもない。任せておいて踵を返した。
食事の時間になっても、少女は全員を警戒したまま動かない。新奈が近づいても、睨んで威嚇してくる。
食堂の端で蹲っているその視線には少量の殺意が混ざっている気がするのは、圭の錯覚ではないはずだろう。
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