1「死神とぼく」

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「なんでそんな疲れた顔してるんだ、千歳」  学校でそんな風に声を掛けられ、んーべつにーと返す。 「ほら、勉強難しいじゃないか」 「すげー適当な言い訳しただろ、今」  稲目というクラスメイトは困ったように苦笑していた。  事実ではあったけれど、確かに本当の理由ではないことは判っていた。 「死神って見たことある?」 「は?」  意味が解らないのだろうが、その反応はいかがなものか。 「あ、この間の読み切りか?」 「漫画の話じゃなくてね」  稲目は首を傾げた。 「いや、気にしなくていいよ。ちょっと変なこと考えたから」 「そうか? その割にはいつもと違うけど」  ん? 「普段は掠れてるのに、今は随分と活力を感じるというか」 「なんだそれ。ぼく、普段そんな無気力なのか」  自覚ないのかと呆れられた。判らないのだから仕方あるまい。  そう言い返すと、稲目は笑いながら、そういきり立つなと制してきた。「何かいいことでもあったか? そういう顔してるよ、今の千歳」  そうなのかなあ。  まあ、理由はなんとなく判るんだけど。 「にやけてるぞ、お前」 「あら」
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