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内心の浮かれを見透かされているような気がしていた。結局、それこそが生きている実感というものなんだろうか。
「死に損ないが生き生きしてるね」
リラは相変わらず辛辣だけれど。
今日も彼女の鎌を受けきって、いつもと同じように家まで引っ張ってきたのだった。
「なんだっていいだろ、楽しいんだから」
「変な人だね、本当に」
妙だなあ、と彼女は独り言ちる。それには敢えて反応せず、フライパンをあおる手は止めない。
ガスコンロはあまり使わなかったけれど、リラを家に連れてくるようになった頃から、やけに頻繁に使うようになっていた。
「おかしい。期限を切られていても、刻限が決められていないなんて」
何を言っているのかは解らない。
しかし、それが自分のことを言っているのはなんとなく判った。
「どういうことなんだろ。わたしは無駄なことをしているのかなあ」
「無駄ならなんで毎回ぼくのところに来るんだよ」
「仕事だからだよ」
そうだったね。
「で、何か引っ掛かることでもあるの?」
「うーん」と、リラの右手の指がくるくる回っている。「きみの寿命が決まっていないことに気付いたんだ。死因には干渉できなくても、いつ死ぬのかくらいは閲覧できる情報のはずなんだけど」
ふうん、と完成した青椒肉絲をもってテーブルに着くと、リラは眉根を寄せて考え込んでいる。なんだか似合わないな、と思ってしまった。
「まあ、それでも殺すだけだものね……」
諦めたようにウィンドウを閉じて、目の前の料理に目を移す。
少しだけ、視線の色が変わった。
いつもと違う、有彩色。
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