1「死神とぼく」

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 内心の浮かれを見透かされているような気がしていた。結局、それこそが生きている実感というものなんだろうか。 「死に損ないが生き生きしてるね」  リラは相変わらず辛辣だけれど。  今日も彼女の鎌を受けきって、いつもと同じように家まで引っ張ってきたのだった。 「なんだっていいだろ、楽しいんだから」 「変な人だね、本当に」  妙だなあ、と彼女は独り言ちる。それには敢えて反応せず、フライパンをあおる手は止めない。  ガスコンロはあまり使わなかったけれど、リラを家に連れてくるようになった頃から、やけに頻繁に使うようになっていた。 「おかしい。期限を切られていても、刻限が決められていないなんて」  何を言っているのかは解らない。  しかし、それが自分のことを言っているのはなんとなく判った。 「どういうことなんだろ。わたしは無駄なことをしているのかなあ」 「無駄ならなんで毎回ぼくのところに来るんだよ」 「仕事だからだよ」  そうだったね。 「で、何か引っ掛かることでもあるの?」 「うーん」と、リラの右手の指がくるくる回っている。「きみの寿命が決まっていないことに気付いたんだ。死因には干渉できなくても、いつ死ぬのかくらいは閲覧できる情報のはずなんだけど」  ふうん、と完成した青椒肉絲をもってテーブルに着くと、リラは眉根を寄せて考え込んでいる。なんだか似合わないな、と思ってしまった。 「まあ、それでも殺すだけだものね……」  諦めたようにウィンドウを閉じて、目の前の料理に目を移す。  少しだけ、視線の色が変わった。  いつもと違う、有彩色。
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