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私はあらかた散歩をし終わると家に帰った。
「どこに行ってもお洒落な街ねえ。みんながみんな物語の主人公になれそう」
私は少しだけこの街が気に入り始めていた。
14歳の子供とは単純なものだ。
「パパママただいま〜…って、あれ?何してるの?」
「おおロレンシア帰ったか。明日から学校だろ?それまでにうちの庭も自慢の庭にしないと。ここらへんはみんな私有地の庭を綺麗にして近所にアピールするのが今どきなんだって。さあ手伝いなさい」
「えっ……なんで私が」
「ロレンシア、これもこの街に馴染むために必要なことなのよ。ママたちも決してお遊びでやってるわけじゃ……やだこのお花すっごくかわいいわあ〜!!」
「おお、おまえに似て、美人な花だな」
「やあだあなたったら〜!オホホホ!」
か、勝手にやってろ…
「ママ、パパ、私お隣に挨拶してくるよ…それでチャラでいいでしょ」
「あ、あら、行ってくれるの?」
「パパたちは今手が土まみれだからな、頼んだぞロレンシア!」
ほんとは二人とも行きたくないくせに。
ママとパパはああ見えてコミュ障なのだ。
いつも他人と話す時は私を使ってコミュニケーションを取る。
「そうだ、手ぶらじゃなんだからフレンチトーストでも作って持ってこう」
私はまだ使い慣れない新しいキッチンでフレンチトーストを作った。
「何とかいい感じにできたな、よし」
お皿に乗せて軽く包んでお隣に向かった。
「こんにちは!隣に引っ越してきたポーツネルです!誰かいらっしゃいますか!」
門の呼び鈴を鳴らすと背の低い影が見えた。
「はい?」
「えっ……」
私は手からお皿ごと落っことしてしまった。
「あ、あんたさっきのっ…!?なんでここにっ」
「だから誰でしょうって問題出したじゃんかよ」
「私はあんたを知らなかったわよ!」
「おれは今朝引越し作業してるのを見かけたんでね。あーあ、なんでわざわざ作ってきて落っことすかなあ」
「あ、あんたのせいでしょうがっ…!」
割れた皿からフレンチトーストが浮く。
「あ、まだ何個かは生きてた。食えそうだわ。いただきまーす」
「だからなんであんたはそうやって人前で軽々しく魔法を使うのよっ!!」
「え?なんで?悪い?」
口をモグモグしながらめちゃくちゃ不思議そうにしてる。
「悪くないけど…家族以外に見せるのはあんまり良くないんじゃないの」
「いーじゃん、別におれの勝手だし。あ、あんた覚醒まだなのに料理は上手いんだな」
私は無視して自分の家に帰った。
覚醒まだって…まだってなにさ。私だって遅れたくて遅れてるんじゃないんだよ!
ていうかなんであいつは私がまだなの気づいたんだろう?
とにかく変なやつ!
「あ、あらロレンシアどうしたの?そんなにほっぺたふくらませて」
「ロレンシアお隣さんどうだった?凄い庭の手入れがされてるからいい家だったろう?」
「別に、ママ、パパ、隣のガキんちょなかなか変なやつだよ。庭が立派だろうが関係なし!!」
私はそれだけ言うと自分の部屋にいった。
「おや、あれは初恋だな」
「恋ね、フフフフフ」
パパとママのしょうもない会話が背後から小さく聞こえた。
今日から学校だ。
例のあいつと同じ学校だろうか。
でも学年は違うはず。私より背も低くかったしパッと見12歳ぐらいだろう。
「それじゃ、パパママ、行ってきます」
「いってらっしゃい!焦らず自分探しするのよ〜!」
焦らしてんのはどっちだか…
「あ」
家を出たとこで例の隣人と出くわした。
「やあおはよう、転校初日か」
「まあね、でも私中等部だから。あんたとは別よ」
「へえ、ポーツネルは中等部か、もっと下に見えたな」
「あんたに言われたくないわよ!だいたい人のこと呼び捨てしといて、自分も名乗りなさいよ」
「先生が名前呼ぶからそんときわかるだろ」
な、なんだこいつはっ…
「だいたい、外であんな魔法使いまくっていいの?世間的にはタブーでしょ」
「あんたも覚醒してないのにうちの学校来ていいのか?他に未覚醒のやつまだいたっけな〜」
へ……?
「だ、だって、うちの両親言ってたよ。未覚醒の子を早く目覚めさせるのが得意な学校だって…」
「まあまあ、行けばわかることだな」
こいつの笑みがなぜか私は怖かった。
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