隣のあいつは変なやつだった。

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私、引っ越してきたの。 知らない街に。 ママもパパも私が覚醒が遅いのは田舎に暮らしてるからだろうって。 なんだか洒落っ気のある都会に住むことになってしまった。 周りは白い壁に赤い屋根の家ばかり。 「ロレンシア、大丈夫よ。あの学校は生徒さんを覚醒させるのに自信があるんですって。だからあなたもすぐ覚えるわ」 私は今14歳。 別にそこまで焦る必要はないと思う。 でもエリートの家はみんな12でもう覚醒してるんだってさ。 「ロレンシアはどんなタイプになるんだろうなあ。パパ楽しみだなあ」 パパは遅咲きだったけど自分の好きなタイプになれた。ママは特に選り好みしなかったけどパパより優秀な能力を手にした。 「私別にそんなの遅くてもいいよ。なんでわざわざ…あっちに友達も沢山いたのに。それに生まれつき決まってるんでしょ?なら焦る必要ないじゃん」 パパは反撃してきた。 「いいや、生まれつきというのは一種の仮説だ。もしかしたらそれまでの生き方によって変わるかもしれないんだぞ!」 「そうそう、それによって将来の職業の道も変わるし!それなら早く知るに越したことはないわ!」 ママもパパの味方だ。 「もう、わかったよ。今さらどうこう言ってももうここまで来ちゃったからね。大人しくその優秀な学校に通うよ」 「ああよかった!グレるんじゃないかと心配だったよー!」 「そうね!お友達もかなり仲良かったみたいだからママも心が痛かったわあ!」 パパとママは手を取り合って踊り始めた。 「私散歩してくる…」 この辺の地形を覚えないと。 しかしこの辺りはオシャレな家が多い。 みんなやたら庭に手がこんでる感じ。 カフェのある通りに行けば人が増え始めた。 こうやって見てるとみんな何も能力の無さそうな普通の人たち。 でもそれはみんななるべく隠してるからだ。 自分だけの能力は時には弱みとなるから。 だからなるべく他人に教えたり人には見せない。 見せる自慢バカもいるけどね。 能力というより「魔法」と呼ぶべきかな。 私たちは一人につきひとつだけ、神様から自分だけの魔法が与えられている。 でもそれは自分では選べない。 12歳を過ぎた頃にそれぞれ覚醒し始めるんだって。 それがどんな法則で決められてるのか知らないけど、人それぞれ種類やタイプが違う。 私は14歳になってもそれが判明しないか、もしくは自分で気づいてないのかわからないけど、それでパパとママは焦ってる。 でもそんなのわからなくっても私が私なことには変わりない。 「わあ、綺麗な帽子」 お店のウィンドウには田舎では見たこともないようなデザインの帽子が飾られていた。 「いいなあ、私もああいうのほしい」 こんな都会に引っ越してきたが、私の家は決してお金持ちなわけではないのだ。 ただパパとママがなんとかなる精神でいつもやってきたから今回もその延長だった。 「なんだ、そのくらい買ってやるよ」 え?誰? 振り向くと知らない男の子がいた。 「あんた誰?」 「さあ誰でしょう」 な、なにこいつ…! 「私別に乞食じゃないんだから。見ず知らずの人に買ってもらうほど落ちぶれちゃいないから」 「へえー、じゃあいらないのか」 「いらないです!別に!」 「試着くらいしてみなよ」 飾られていた帽子が宙を舞って店の中から私の頭へと飛んできた。 「な……!?」 「ほら、結構似合ってるよ」 「あんたに関係ないでしょー!」 私はそう叫ぶと商品である帽子をその子にぶん投げて走って逃げてきてしまった。 「し、信じられない……あんな街中で、他人に見えるとこで自分の魔法使うなんて……」 あいつ頭おかしいわ。 それが第一印象だった。
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