1章 入学式は大騒動!

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   * * * 『ココちゃんってヘンだよねー』  小学生のとき、わたしはいろんな人にそう言われた。  わたしが、急に寒くなっちゃう体質だからだ。  みんなが汗びっしょりになってる真夏のお昼に急にパーカーをはおったり、冬にダウンジャケットやマフラーでモコモコになっているのにブルブル震えだすから、おかしいって思われるんだよね。  わたしもおかしいと思う。  急に寒くなるっていうのもおかしいし、寒くなっても熱が出るとか、おなかが痛くなるとかいうわけじゃない。  お母さんが心配して病院に連れて行ってくれたこともあったけど、病気じゃないってことだけが分かって、原因は分からないままだ。    まあ、時間がたてばおさまるし、寒ければたくさん着こめばいいだけなんだけど。さすがに入学式の会場に防寒着なんて持ってきてない。  わたしは新入生席のパイプ椅子に腰かけたまま、細いため息をついた。  入学式は無事に進んでいるけど、わたしの体は冷える一方だ。いくらこすり合わせても手は冷たいままだし、むき出しの膝こぞうがスースーする。上履きの中の足もギュウッとちぢこまっていて、このままじゃしもやけになりそう。  せめてブレザーの下にカーディガンでも着てくればよかった。  今さら後悔していると、体育館内が少しザワザワし始めた。  舞台の上で、校長先生が何回か同じ名前を呼んだんだ。  今、新入生は校長先生からひとりずつ名前を読み上げられているところで、呼ばれたら返事をして、その場に立つ、という流れになっている。  今はまだ一組の番。わたしは二組だから、座ったままで一組の方を見た。  どうやら返事をしない人がいるみたいだった。男子みたい。みんな名前の順番に並んでるから、後ろから見たらそれが誰だかまるわかりだ。  顔は見えないけど、男子にしては髪が長めの人。耳が隠れてるくらいだから、わたしとそんなにかわらない長さだ。  ぼうっとしてたのかな。  その男子はとなりの子につつかれてやっと立ち上がった。 「あの人恥ずかしー」  わたしのすぐ前にいた女子が二人でクスクス笑っている。  確かにあの人目立っちゃったなーと思うけど、小学校でよくクスクス笑われてたわたしとしては、あの男の子をバカにはできない。  だって何か事情があるかもしれないからね。左耳を押さえてるみたいだし、もしかしたら耳が悪いとか、具合が悪いとか、いろいろ考えられる。    って、人の心配してる場合じゃない。  本格的に寒くなってきた。  冬の夜に半袖で外に飛び出しちゃった感じ。ほっぺたなんて皮膚が切れるように冷たくて、奥歯がカチカチいい始めている。  どうしよう。こんなんじゃ名前を呼ばれてもヘンな返事しかできないかも。 今度はわたしがクスクス笑われる!  と、思った瞬間だった。 「おええええええぇぇぇぇ!」
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