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今、目が合った?
反射的に固まってしまった瞬間、吹雪に襲われたみたいにまた寒さがぶり返してきて、わたしは二の腕を抱きしめた。
思わず「うっ」と声が出てしまったけど、幸か不幸か同じタイミングで一組の方でも退場者が出たから、わたしは目立たずにすんだ。
背中を丸めながらチラッと見たら、さっき返事が遅れていた男の子が列から出ていくのが分かった。
まだ耳を押さえてる。
本当に具合が悪かったんだ。
そして四組の列からも、先生に引っぱり出される女の子がいる。たぶんさっき吐きそうになった子だ。「大丈夫です!」ってはっきりした声で抵抗してるけど、連れていかれてしまった。
一組からひとり、二組からひとり、四組からひとりの退場者。
あっちもこっちも体調不良って、どうなってるの?
ちっとも入学式らしくない空気の中、新入生も在校生も、新入生の保護者も、不安そうにあちこち見回したり、何かをささやきあったりしている。
かくいうわたしも正直寒くてたまらなくて、すぐにでもあたたかいところに移動したいんだけど、こんな大騒ぎになってしまったらとても言い出せない。どうにかガマンしなきゃ。
そのとき、ステージの上で校長先生が小さく咳払いをした。
「えー、アクシデントがあって驚いたかもしれませんが、自分のため、友だちのためにきちんと意見を言えることは素晴らしいことです。みなさんも、何かあったときには勇気を出して言えるようにしましょうね」
会場がいっきに静まり返った。
校長先生の言葉がひとりひとりにきちんと届いた感じがする。
わたしの心にもまっすぐささった。だってふだんのわたしだったらこの状況で言いだせないもん。目立っちゃうって考えが先にきて、さっきのゴーグルメガネの男子みたいに、はっきりと声をあげられない。
でも仲のいい子がピンチになったら、勇気を出そう。もう中学生だしね。
決意をこめて握ったこぶしが、ブルブル震えた。
気持ちは熱くてもやっぱり寒いよ。
ああ、ここまで冷えるとけっこうやばい。前に何度かあったんだよね。寒さがピークになると、マズいことが起こっちゃうって。どうしよう。久々にアレがきちゃうかも。
ヘンな悲鳴が出ないようにぎゅうっと身体を縮こまらせていると、となりの女の子が突然「はい!」と大きな声を出して、真っ直ぐ挙手して席を立った。
入場整列のとき、わたしに「大丈夫?」って声をかけてくれた、目の大きな女の子だ。
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