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びっくりして彼女の顔を見上げると、彼女はわたしの方に手のひらをさしだして、
「この子も、さっきから震えてて!」
って、駆けつけた男の先生にうったえた。
わたしは息を飲みこんだ。
「どうしたの」
先生に問われた瞬間、今出て行ったらすごく目立つ、ヘンって思われる……って考えが頭をよぎって、口がもごもごする。
「あ、えと、大丈夫、です……」
「大丈夫じゃないよ!」
笑ってごまかそうとしたわたしの声に、となりの彼女の声が重なる。
「だってくちびる真っ青だよ。具合悪いんでしょ?」
一生懸命にうったえる彼女に、わたしは声も出ないほど驚かされた。
気づいてくれてたんだ、っていう驚き。
そして心配してくれてたんだっていう驚き。
すごく新鮮な驚きで、わたしはついに、うなずいてしまった。
「すごく、寒いです……」
「そうか。じゃあ保健室に行こう。きみ、ありがとう」
急にテキパキし始めた先生が、わたしを列から連れ出すために手を伸ばしてきた。
その瞬間、バチン――と、すごい衝撃がわたしと先生を襲った。
「うわ!」
「ひゃあっ!」
二人分の悲鳴が体育館の高い天井いっぱいにひびいて、せっかく落ち着きを取り戻した体育館がまたどよめく。
「な、なんだ今のは」
「す、すいません! 静電気です……!」
「静電気⁉」
先生がすっとんきょうな声をあげた。
これは完全にわたしの失敗だ。
寒いからって体中をさすっていると、たまに飛び上がるくらい強い静電気が起こっちゃうの、分かってたのに!
ああもう、最悪。
「――なあ」
申し訳ないやら恥ずかしいやらで両手で顔を隠していると、いきなり左手を引きはがされた。
あらわになった左目に映るのは、なぜかあのゴーグルメガネくんだ。
いつの間にかゴーグルメガネをかけ直していて、大きなレンズ越しにわたしを見て、
「行くぞ」
って、わたしの左手首をつかんで引っぱり始める。
わたしは一瞬にしてパニックになった。
「え、ちょ――行くって、どこに?」
「保健室だよ。具合悪いんだろ?」
肩越しに言われて、なんだか頭の中がカーッと熱くなる。
今日一番くらいにざわめく体育館。
わたしは真っ赤になりながら、なされるままだ。
ああ、もう。ああ、もう。
中学では目立たないようにって思ってたのに、結局誰よりも目立ってる。
しょっぱなからこんなことで、わたし大丈夫なの?
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