1章 入学式は大騒動!

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 びっくりして彼女の顔を見上げると、彼女はわたしの方に手のひらをさしだして、 「この子も、さっきから震えてて!」  って、駆けつけた男の先生にうったえた。  わたしは息を飲みこんだ。 「どうしたの」  先生に問われた瞬間、今出て行ったらすごく目立つ、ヘンって思われる……って考えが頭をよぎって、口がもごもごする。 「あ、えと、大丈夫、です……」 「大丈夫じゃないよ!」  笑ってごまかそうとしたわたしの声に、となりの彼女の声が重なる。 「だってくちびる真っ青だよ。具合悪いんでしょ?」  一生懸命にうったえる彼女に、わたしは声も出ないほど驚かされた。  気づいてくれてたんだ、っていう驚き。  そして心配してくれてたんだっていう驚き。  すごく新鮮な驚きで、わたしはついに、うなずいてしまった。 「すごく、寒いです……」 「そうか。じゃあ保健室に行こう。きみ、ありがとう」  急にテキパキし始めた先生が、わたしを列から連れ出すために手を伸ばしてきた。  その瞬間、バチン――と、すごい衝撃がわたしと先生を襲った。 「うわ!」 「ひゃあっ!」  二人分の悲鳴が体育館の高い天井いっぱいにひびいて、せっかく落ち着きを取り戻した体育館がまたどよめく。 「な、なんだ今のは」 「す、すいません! 静電気です……!」 「静電気⁉」  先生がすっとんきょうな声をあげた。  これは完全にわたしの失敗だ。  寒いからって体中をさすっていると、たまに飛び上がるくらい強い静電気が起こっちゃうの、分かってたのに!   ああもう、最悪。 「――なあ」  申し訳ないやら恥ずかしいやらで両手で顔を隠していると、いきなり左手を引きはがされた。  あらわになった左目に映るのは、なぜかあのゴーグルメガネくんだ。  いつの間にかゴーグルメガネをかけ直していて、大きなレンズ越しにわたしを見て、 「行くぞ」  って、わたしの左手首をつかんで引っぱり始める。  わたしは一瞬にしてパニックになった。 「え、ちょ――行くって、どこに?」 「保健室だよ。具合悪いんだろ?」  肩越しに言われて、なんだか頭の中がカーッと熱くなる。  今日一番くらいにざわめく体育館。  わたしは真っ赤になりながら、なされるままだ。  ああ、もう。ああ、もう。  中学では目立たないようにって思ってたのに、結局誰よりも目立ってる。  しょっぱなからこんなことで、わたし大丈夫なの?
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