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2章 保健室ではじめまして!
「あらまあ、初日から大盛況ねえ」
保健室に着くと、体の大きい白衣の先生が笑顔でわたしを出迎えてくれた。
「では五代先生、あとはお願いします」
大古場先生がそう言って頭を下げたあと、「はあい、任せてください」って返事をしたから、養護の先生は五代先生っていうんだろう。わたしのおばあちゃんくらいの歳の、ベテランって感じの先生だ。わたしを丸い椅子に座らせて、にっこり笑う。
「水森さんだったわね。悪寒がするのよね。朝は熱はなかった?」
「はい、大丈夫でした」
五代先生は素早くメモを取って、わたしの額に手を当てた。
「うん。熱はなさそうだけど、向こうの彼女が終わったら、あなたもいちおう熱をはかりなさい。ごめんなさいね。今体温計がひとつしかなくて」
はい、とうなずいてから、わたしは保健室を見回した。
日当りのいい保健室には、ベッドが二台ある。そのうち一台に腰かけた女の子が、脇に体温計をはさんでいた。
すっごい美少女だ。目がぱっちりして、長い髪はゆるふわで、お人形さんみたい。
でも不服そうな表情で体温計をにらんでいる。もしかしてさっき吐きそうになってた子かな。イヤイヤ先生に連れ出されてる感じだったし、今は声はかけないでおこう。
わたしは彼女の体温測定が終わるまで黙って待つことにして、彼女が座っているベッドの、となりのベッドに目をやった。
男の子がうつぶせに寝ていて――なぜか頭の上にマクラをのせている。
どういう状況?
よく分かんないけど、初対面の人にツッコむ勇気はなくて、わたしは最後にもう一か所、人の気配のある方に目をやった。ベッドとは反対の壁際にある、ついたての向こうだ。
「ギン、大丈夫か? まだキツい?」
姿は隠れて見えないけど、ゴーグルメガネくんの声がする。
彼、保健室に着くなりわたしを放りだして奥に走って行ったんだ。
たぶん、具合の悪くなった子と仲がよくて、心配だったんだろう。
のぞいてみると、ゴーグルメガネくんが、手洗い場に手をついているもうひとりの男の子の背中をさすってあげていた。
「ごめん、アッちゃん……」
「いいって。ほら、うがいしろよ。少しはマシになるんじゃない?」
アッちゃんと呼ばれたゴーグルメガネくんが促すと、ギンと呼ばれた男の子が、お椀の形にした手に水をためて口をゆすぎ始めた。
気分悪そう。大丈夫かな。
「吐きそうならすぐ言ってねー」
「いえ……」
先生の声に反応して二人がふり向いた瞬間、ちょうど先生と二人の間にいたわたしは、二人からいっぺんに注目された。
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