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「アキ、学校にいた黒オバケってどこにいるか分かる?」
「正直似たようなやつばっかで、見分けつかない。どうする。いったん逃げるか」
みんなに意見を聞くアキに、「イヤだ」と即答したのは、颯真くんだった。
「どうせ烏合の衆」
つぶやいたかと思うと、颯真くんはところかまわずといったふうに消臭液を噴射させ始めた。もう、乱射する勢いだ。
ふだんぼんやりしてることが多い颯真くんの大反撃に、わたしもみんなもびっくり仰天。
でも、なんかテンション上がってくる!
「おー、颯真が本気出した」
「ぼくらも負けてられないね」
アキとギンちゃんも広範囲を狙って水鉄砲を撃ち始めた。その間に、リズちゃんがその場にしゃがみこんで聖ちゃんに香水を吹きかける。
「これでしばらくは大丈夫よ。香水は香りが強いの。あなたを守るわ」
女神さまみたいな優しい声に、聖ちゃんは小さくうなずいた。でも落ち着かないようにしきりに目を動かしている。浅い息を吐きながら、左腕を抱きしめて、
「あの、ココちゃん。なに? 何が起きてるの?」
わたしは風船の剣を持ち直して、聖ちゃんと視線を合わせた。
「聖ちゃん、落ち着いて聞いてね。今、聖ちゃんの腕の手形にオバケがくっついてきてるの。そこに他のオバケも呼び寄せられて、わたしたち、囲まれてるみたい」
「えっ……」
「でも大丈夫。みんなで守るから」
青ざめた聖ちゃんをひしと抱きしめ、わたしはみんなの方を振り返った。
「リズちゃん、聖ちゃんと一緒にいてあげて。ギンちゃんと颯真くんは、お願い、聖ちゃんたちを守って」
風船の剣とマフラーを構え、わたしは撃ちっぱなしのアキに目をやる。
「アキ、オバケの位置教えて。全部やっつける」
「は⁉ 全部って、そんなの無理に決まってるだろ!」
「やってみないと無理かどうか分からないよ」
颯真くんみたいなことを言いながら、わたしはもう風船の剣にマフラーをからめていた。
無謀なのは分かってる。
できるかどうかも分かんない。
でも友だちのピンチに勇気出すって、わたしは決めた。
今は勇気の出しどころ。
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