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こうして見ると、ずいぶん対照的な二人だ。
ゴーグルメガネくんは、第一印象のとおり意志の強そうな目をしていて、試合前に整列するスポーツ選手みたいにしゃんと背筋を伸ばして立っている。
一方具合の悪そうな男の子の方は、下がり眉のやさしい顔をしていた。体の線も細くて、スポーツより読書とか好きそうな文化系の雰囲気。口元にハンカチを押しつけているけど、目が合ったわたしに笑いかけようとしてるのが分かる。
「あの、大丈夫? よかったらここ、座って」
わたしはすぐに椅子をゆずった。彼は「大丈夫だよ」って遠慮したけど、ゴーグルメガネくんが「あまえとけ!」って、彼の肩を押しこむようにして無理やり座らせる。
ゴーグルメガネくん、ちょっと強引みたい。座らされた方は困ったようにわたしを見て、
「きみも具合悪いんじゃないの?」
「大丈夫だよ。わたしだいぶよくなったから」
わたしはガッツポーズでアピールした。
大げさでなく、いつの間にか寒さを忘れていたんだ。
体育館だけガンガンに冷房が効いてたのかなーって思うくらいだけど、みんな平気そうだから、そうじゃなかったんだろうな。とにかく、わたしはもう大丈夫だ。
彼がハンカチを下ろして笑った。目もくちびるも、優しいほほえみの形をしている。
「ありがとう。確かきみ、同じクラスだよね。ぼく、金城銀之助。西小出身。よろしくね」
金に銀、キラキラだ。わたしは自然と笑顔になって、
「わたしは水森湖子。ココとかコッコとか呼ばれてるよ。こちらこそ、よろしく!」
「ココちゃん? かわいい名前だね」
金城銀之助くんがふわっと笑って、わたしは思わず心の中でひゃーっと悲鳴をあげた。
べつに、ホメられたのは名前だけなんだけど。かわいいとか、言われたことないもん。くすぐったい。
照れ笑いしてると、ずいっと、横からゴーグルメガネくんが割って入ってきた。
「オレは火野 暁。ギンと一緒で西小からきた」
なぜかものすごく構えた態度で自己紹介された。
ううーん。もうちょっと「かわいい」の余韻にひたっていたかったなー。まあいいか。
細かいことは気にせずに、わたしは火野暁くんにもにっこりする。
「よろしく、火野くん。あと、さっきはありがとう」
「ドウイタシマシテ……」
「な、なんか口調がかたくない? 火野くん……」
「……べつに。ていうか、アキでいい」
「あ、うん。分かった……」
素直に返事をしたけど、今、ロコツに話をそらされた気がする。入学式が始まる前はすごくフレンドリーだと思ったの、気のせいだった?
戸惑っていると、
「ぼくのことも好きなように呼んでね。ギンとか、ギンちゃんとか呼ばれてるから」
と、金城銀之助くんが助け舟を出してくれた。
優しい人なんだ。わたしはあったかい気持ちになって、「じゃあギンちゃんって呼ぶね」と笑った。
「……ねえ、少し静かにして」
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