2章 保健室ではじめまして!

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 こうして見ると、ずいぶん対照的な二人だ。  ゴーグルメガネくんは、第一印象のとおり意志の強そうな目をしていて、試合前に整列するスポーツ選手みたいにしゃんと背筋を伸ばして立っている。  一方具合の悪そうな男の子の方は、下がり眉のやさしい顔をしていた。体の線も細くて、スポーツより読書とか好きそうな文化系の雰囲気。口元にハンカチを押しつけているけど、目が合ったわたしに笑いかけようとしてるのが分かる。 「あの、大丈夫? よかったらここ、座って」  わたしはすぐに椅子をゆずった。彼は「大丈夫だよ」って遠慮したけど、ゴーグルメガネくんが「あまえとけ!」って、彼の肩を押しこむようにして無理やり座らせる。  ゴーグルメガネくん、ちょっと強引みたい。座らされた方は困ったようにわたしを見て、 「きみも具合悪いんじゃないの?」 「大丈夫だよ。わたしだいぶよくなったから」  わたしはガッツポーズでアピールした。  大げさでなく、いつの間にか寒さを忘れていたんだ。  体育館だけガンガンに冷房が効いてたのかなーって思うくらいだけど、みんな平気そうだから、そうじゃなかったんだろうな。とにかく、わたしはもう大丈夫だ。  彼がハンカチを下ろして笑った。目もくちびるも、優しいほほえみの形をしている。 「ありがとう。確かきみ、同じクラスだよね。ぼく、金城銀之助(きんじょうぎんのすけ)。西小出身。よろしくね」  金に銀、キラキラだ。わたしは自然と笑顔になって、 「わたしは水森湖子。ココとかコッコとか呼ばれてるよ。こちらこそ、よろしく!」 「ココちゃん? かわいい名前だね」  金城銀之助くんがふわっと笑って、わたしは思わず心の中でひゃーっと悲鳴をあげた。  べつに、ホメられたのは名前だけなんだけど。かわいいとか、言われたことないもん。くすぐったい。  照れ笑いしてると、ずいっと、横からゴーグルメガネくんが割って入ってきた。 「オレは火野 暁(ひのあかつき)。ギンと一緒で西小からきた」  なぜかものすごく構えた態度で自己紹介された。  ううーん。もうちょっと「かわいい」の余韻にひたっていたかったなー。まあいいか。  細かいことは気にせずに、わたしは火野暁くんにもにっこりする。 「よろしく、火野くん。あと、さっきはありがとう」 「ドウイタシマシテ……」 「な、なんか口調がかたくない? 火野くん……」 「……べつに。ていうか、アキでいい」 「あ、うん。分かった……」  素直に返事をしたけど、今、ロコツに話をそらされた気がする。入学式が始まる前はすごくフレンドリーだと思ったの、気のせいだった?  戸惑っていると、 「ぼくのことも好きなように呼んでね。ギンとか、ギンちゃんとか呼ばれてるから」  と、金城銀之助くんが助け舟を出してくれた。  優しい人なんだ。わたしはあったかい気持ちになって、「じゃあギンちゃんって呼ぶね」と笑った。 「……ねえ、少し静かにして」
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