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めでたし、めでたし?
校長室の窓が開いていた。
梅雨入り目前のしめった風に、ブラインドのヒモがかすかに揺れる。
わたしは部活へ急ぐ足を止め、窓の向こうをひととき見つめた。
あれから二週間。
わたしたちがボスの気配を感じることはなくなった。
壺の中でゆっくり眠ってるのかな。
棚の上の二つの壺にはしっかりとフタが閉められていて、室内はとても静かだ。
「ココちゃーん、何してるのー?」
遠くで聖ちゃんが呼ぶ声がして、わたしは校長室に背を向けた。
「なんでもなーい。今行くー!」
駆けだして、聖ちゃんやダンス部の仲間たちと合流する。
わたしの中学生活はドタバタ続きのスタートだったけど、やっとまともな日常がやってきた。
これからは部活をがんばって、勉強もして、友だちと遊んで――ひょっとしたら誰かに恋をしたりして。
分かんないけど、自分らしく、楽しく行こう!
――って、思ったのに。
「ところでココちゃん、聞いた?」
「え?」
「裏門の先の墓地のあたりで、誰もいないのに足音がついてくるってウワサ。成仏できない幽霊のしわざだって話だよ」
聖ちゃんのヒソヒソ話に、わたしはたちまち顔面蒼白になる。
だってそこ、いつも帰りに通ってたところだもん!
「……遠回りしなきゃ。どれだけ無駄な時間がかかっても絶対避けて通らなきゃ……」
念仏みたいにブツブツつぶやいていると、突然、ダンス部の練習場所に見慣れた三人組が姿を見せた。
アキにギンちゃんに颯真くん。
……なんかイヤな予感がする。
とっさに背中を向けたわたしだけど、当然見逃してもらえるはずもなく。
「おー、コッコ。今日部活何時まで? 終わったらちょっとつきあえよー」
「絶対イヤ!」
わたしの中学生活は、まだまだドタバタしそうである。
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