episode⑦-1

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episode⑦-1

「少し…ちくっとするよ」 「え…あ…ん…」 オンナの首筋にゆっくりと牙を立てる。 今日の僕の「狩り」はこれで終了…だ。 少しずつだが 僕なりのスタイルが確立されつつあるけれど 勝率は7割…くらいのところか…。 「上出来だよ、ユノヤ。まだ始めたばかりなんだし」 チャンミン兄さまはそう言ってくれるけど とうさまは何も言わない。 ダメ、とも言わないけど よくやったと言われたこともない。 …やっぱりまだまだなのかな、僕…。 本当にとうさまみたいな 最強のヴァンパイアになれるんだろうか…?? そんなことをぼんやりと考えながら 歩いていたからか、 僕はいつの間にか 縄張りエリアから少しずつはずれていたことに 気がつかなかったようだ。 「おまえ…そこで何をしている?」 あっという間に何人かの男たちに囲まれてしまう。 し、しまった…!! とうさまたちに知らせなきゃ…! …いや…ここは闘うべきなのか…?? こんな場面を想定しての訓練とシミュレーションは もう何度となく繰り返して学んできた。 最初はなかなかついていけなかった トーマスの動きも ほぼ100%かわせるようになってきた。 だが、一瞬の迷いが 僕の動きにスキを作ってしまったことに 気がついた時はすでに遅かった。 あっという間に飛び掛ってきた男を 寸でかわしたものの 完全にガード出来ず、 腹に鈍い痛みを覚えて片膝をつく。 痛ってぇ… くそっ…! じりじりと迫ってくる男たち. ここは…闘う!! 僕が左脇の小型ソードに手をかけたその時、 誰かが僕の前に立ちはだかった。 同時に響く、耳を劈くような金属音。 男の1人が振りかざしてきた刃を 僕の前にいたその人物がかわしていたのだ。 その青白く光る大きなソードを 身構えていたのは… 「おまえら、大勢で1人に何してるんだ!!」 …オンナ!? それもかなり若い…。 華奢な背中に長い亜麻色の髪が揺れる。 だが、大ぶりなソードを 難なくこなす手さばきは相当の使い手だ。 「邪魔すんな、ベロニカ!!!」 「そこをどけよ!!ケガすんぞ」 「ふざけんな!! この男に手出しは無用だ」 これが… 僕の心を大きく揺さぶることになる 孤高の女戦士・ベロニカとの 初めての出会いの夜だった…。
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