episode⑦-2

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episode⑦-2

「この男に手出しは無用だ」 隙を見せることなく構えるベロニカに 男たちの中の1人が野次を飛ばす。 「こいつはおまえの彼氏かよ?」 下卑な笑いが起こった途端、 ベロニカは一気に空に向かって飛び上がると きりもみの状態で体を空から 男たちの中に突っ込んでいく。 「ぎゃああああ~~~~!!!」 断末魔のような叫び声… ベロニカを野次った男は右腕を切り落とされていた。 「お、覚えてろよ!!ベロニカ!!!」 戦々恐々となった男たちは 痛みにのたうちまわる男を抱えるようにして その場を逃げ出した。 つ…強い…!! 「あ…あの…」 「ばかやろう!!ここはおまえの 縄張りじゃないんだろ??」 怒鳴るように振り返ったベロニカは 僕の顔を見た途端、 びっくりしたような表情になった。 「ユ…ユノ…!?」 え…?? 「…とうさまを知っているのか?」 「おまえ…ユノの息子なのか?」 「ああ…」 「こりゃあいいや」 ベロニカは突然おかしそうに笑い出した。 口の利きかたはひどく乱暴なのに 笑うと、なんともかわいらしい表情になる。 「おまえ…なんて名前だ?」 「ユノ」 「ふざけんな」 「本当さ。兄さまもユノだから、 僕はユノヤ、兄さまはユンジャって呼ばれてる」 「ユノヤか…」 ベロニカはふっと笑うと ソードをしまいながら立ち上がった。 「次は助けてやんねーからな。 気をつけろよ、ユノヤ」 「べ、別に助けてもらわなくったって…」 「お?やれんのか?おまえ」 「当たり前だ!!」 「そっか。ならいいけどよ。 あ、俺はベロニカ。一応オンナだ」 「わかってるよ」 そんな華奢な男なんているわけがない。 そんなにでっかい目の男なんか… 「ベ、ベロニカは何でオンナなのに 狩りなんかやってるんだ?」 「俺は…狩りはしない」 「え…?」 「目的が…あるんだ」 「目的…?」 「それを果たすまでは、普通のオンナに 戻るわけにはいかないんだ」 ベロニカの大きな瞳に 一瞬、悲しみの影が降りたように見えたのは …気のせいか? 「じゃあな、ユノヤ。 ユノに…いや、とうさまによろしく」 ベロニカはふっと笑うと、 あっという間に傍の木に飛び移っていった。 すばしこいヤツ…。 あの乱暴な口の利きかたや 大ぶりなソードを軽々と使いこなすあたりは とてもオンナだとは思えない。 なのに… 目的…と話した時の ベロニカの大きな瞳に 暗い影が落ちたように見えたのが なぜか脳裏に焼き付いて離れなかった…。
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