episode⑦-3

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episode⑦-3

「ベロニカに会ったのか?」 「はい…」 「そうか。元気そうだったか?」 「元気どころか…」(ボソッ) 「ん? どうした?」 「あ…いえ。とうさまは ベロニカのことを知っているんですか?」 「ああ…昔な」 とうさまはふっと笑った。 「今も…まだ探しているのか?あいつは」 「探している?…誰をですか??」 「父親の仇だ」 「え…?」 「かつては父親の親友だった男だそうだ」 「そんな…」 「ベロニカは父親の仇を討つという名目で 縄張りを解かれているんだ」 目的って、そういうことだったのか…。 「ベロニカのソードを見たか?」 「はい。青白く光るかなり大きなソードでした」 「それは父親の形見だ」 「形見…」 「サファイアソード。俺たちの世界では 名刀のひとつだ。」 とうさまはゆっくりと僕に微笑んだ。 「おそらく血の滲むような努力をしたに違いない。 オンナの身であのソードを使いこなせるのは ベロニカくらいだろう」 「とうさま…。 ベロニカの仇はどんな男なんですか?」 「俺も会ったことはないが、 どうやらヴァンパイアから人間に 姿を変えているらしい」 あんなにか細い体で たった1人で 父親の仇を追っているなんて… 「ユノヤ」 「はい…」 「ベロニカの力になってやれ」 「はい…」 「おまえの元にベロニカが現れたということは 俺たちの縄張りの中にその仇がいるのかもしれない」 「そうですよね…」 「あいつは強いが、やっぱりオンナだ。 男のおまえが守る時が必ずくる」 「わかりました」 とうさまは右側の腰に差していたソードを 手に取ると、僕に差し出す。 それは銀色に輝く美しいソード・・・ 「これは…」 「シルバーソードだ。 ベロニカのソードほどではないが おまえならこのソードの力を 最大限に引き出せるはず」 「ありがとうございます、とうさま」 「気持ちをこのソードに集中させてみろ。 そうすれば、このソードは無敵だ」 「はい…!!」 僕はとうさまからもらったソードを そっと胸に抱いた。 すると、僕の胸の中で ソードがほのかに熱を帯びたような気がした。 「あったかいだろう?」 「はい」 「その感覚、忘れるな」 とうさまは僕の頭をくしゃっと撫でると 部屋を出ていった。 僕はまた… 近いうちにベロニカに会えるような そんな気がしていた。 その時は… この前の借りは必ず返す。 そうこの胸とシルバーソードに誓った。
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