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episode⑦-5
思えば…
とうさまの仇をもうどのくらい追っているのだろう。
それまでの俺は
花の世話が好きな普通のオンナだったように思う。
いつか現れるであろう
人生の伴侶と共にこの屋敷で花を育て
子供を産み
他のオンナたちと同じように
幸せで平凡な人生を送るはずだった。
それは…
大好きなとうさまを
とうさまが大切にしていた友人であるあの男に
殺された時から一変した。
とうさまを愛していただけのかあさまは
生きる気力の全てを失って
床に伏せたまま
とうさまの後を追うように亡くなってしまった。
俺は屋敷の全てを処分して
俺たち家族に尽くしてくれた使用人たちに
財産のほとんどを給金代わりに手渡して
根無し草になった。
手元に残ったのは
とうさまの形見の
このサファイアソードのみ…。
あてもなく仇を探す旅の途中で
野垂れ死にしそうになった俺を救ったのは
ユノだった。
「オンナの身で仇を探すなら
このソードを使いこなせるようになってからにしろ」
ユノはそう言って
俺にこのサファイアソードを使いこなせるように
ここを頼れ…と、ある場所を教えてくれた。
「力をつけたら長老から縄張りを解く
許しをもらうんだ、ベロニカ。いいな?」
ユノはにっこりと笑って
俺の頭をふんわりと撫でてくれた。
思えば…
俺の初恋の相手は、ユノだったように思う。
ユノに出会わなかったら…
今の俺は存在しないだろう。
そして…
ユノが教えてくれた場所にいたのは
オンナでありながら
数々のソードを使いこなす
後の俺の師匠・イザベラの屋敷だった。
「あんたのことはユノから聞いてるよ。
父親の仇を討ちたいんだろう?」
「はい…」
「あたしの教え方はキツイよ。
死ぬ気でついてこれるかい?」
「もちろん…です」
そうして
俺はイザベラの元で壮絶な修行を
受けることになった…。
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