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episode⑥-1
満月の夜が訪れる。
今日は僕の初めての「狩り」の日。
少し…どきどきしていた。
僕は生まれてからこの世界の外に
出たことがない。
だから、何もかもが初めての出来事だ。
夜も更けた頃…
とうさまとチャンミン兄さまと3人で
ミサキさんや、かあさまが住んでいた
「あの世界」へ出かける。
ある街のあるポイント…
そこまでの道を歩く間、
僕たちは何もしゃべらなかった。
その場所にたどりついた時、
「じゃあ、ヒョン…行きますね」
チャンミン兄さまが静かに口を開いた。
「ああ、後でな」
「ユノヤ。頑張れよ」
そう僕に声をかけた途端、
チャンミン兄さまの姿は消えていた。
驚く僕にとうさまはこう言った。
「いいか、ユノヤ。
狩りのスタイルはそれぞれだ。
俺たちは1人ですべてを行う。」
「はい…」
「ひとつだけ…心しておけ」
とうさまは僕の目をじっと見つめた。
その深い紺碧色の瞳に僕が映る。
「イヤがるオンナから無理矢理血を吸うな」
「はい、とうさま」
「そんな形で吸った血は体の中で
毒に変わることもある」
毒…そう聞くと、少し背中がゾクっとする。
そんな僕を見たとうさまは優しく微笑んだ。
「おまえは俺の息子だ。すぐにわかるはず」
「はい…」
「危険だと感じたら、俺でもチャンミンでも
いいからすぐに呼べ。ただし、脳内からだぞ」
「わかりました」
「後で会おう、ユノヤ」
そしてとうさまの姿も闇の中に消えた…。
1人残された僕はその場に立ち止まっていた。
やり方なんてもちろんわからない。
だけど…なんとなく感じるんだ。
ゆっくり目を閉じてみる。
静かに訪れる闇と静寂…。
しばらくそのままでいると、
その中に「匂い」がした。
その「匂い」に神経を集中させてみる。
なんだか…ゾクゾクするような感覚が…
これじゃないのか…???
ゆっくりと目を開けると
僕は公園の中にいた。
この意識には体を移動させる能力が
潜んでいたらしい。
その時…
僕の横を走って通りすぎていく影があった。
…オンナ、だ。
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