episode⑥-3

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episode⑥-3

…上出来だな、ユノヤ。 どこからか声がする。 僕はそのまま脳裏で会話をした。 …とうさま… …初めてのオンナの血はどうだったか? …なんか…甘い味がしました。 …なら、合格だな。 …とうさま… …ん?何だ? …人間は…あんなに弱いものなのですか? …そうだな…。だが、むやみに傷つけてはダメだぞ。 …はい…。 …俺たちが闘うのは、邪悪な人間が 向かってきた時だけだ。 わかったな?ユノヤ。 …はい、とうさま。 …じゃあ、帰るぞ。 …え…もう…ですか?? …まだいたいのか? …はい… …最初からそんなに飛ばすな。…行くぞ。 僕はまだまだ狩りをしたかったけれど とうさまの言葉は絶対だから 渋々戻ることにした。 でも… おもしれえ…狩り…。 とうさまに褒められて 僕は有頂天になっていた。 意外とカンタンなものだな… それにしても、あの甘い血の味…。 ああ…早く狩りに行きたい。 僕は毎日でも出かけたかったのに とうさまたちはなかなか狩りに 出かけようとしなかった。 どうも満月の夜が狩りの日のようだ。 ええっ!?15日に1度なの…??? もっと行きたい…!! 「そう最初からがっつくな」 とうさまはそう言って笑ったけど…。 そしてやっときた満月の夜。 僕は朝からわくわくしていた。 「今夜も一緒に出かけよう」 とうさまはそう言って何か言いかけた。 「僕、今日は1人で行ってきます!!」 僕はもうガマンができなくなって お城を飛び出した。 「おい、ちょっと待て!!ユノヤ!!!」 とうさまが僕を呼ぶ声が聞こえたけれど 大丈夫です、とうさま!!…と、 脳裏から声を送っておいた。 この僕の独りよがりな行動が まさか、あんなことを引き起こしてしまうなんて この時の僕には まったくわかっていなかったんだ…。
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